手芸が趣味の三姉妹の母Imoanです。長女は心臓病と肺疾患による障害があります。両大血管右室起始症(DORV)という先天性心疾患で心臓の構造が普通の人と違うため、酸素を含んだきれいな血液と体中を巡って汚くなった血液が常に血中で混ざっています。また肺は先天性嚢胞状腺腫様肺奇形(CCAM)といって肺の一部が良性の嚢胞状の腫瘍だったため、生まれてすぐに左肺の2/3を切除し正常な肺は右だけになります。この二つの疾患のために血中の酸素濃度が健康な人よりも低い低酸素血症の状態が続いています。
長女の平均的な血中の酸素濃度は80%前後で、動けば下がり70%台、風邪などで体調を崩して肺炎などに悪化してしまうと呼吸が苦しくなり60%台にまで下がってしまいます。60%台にまで下がると歩くのも辛くなり、即入院になります。ちなみに健康な人はほぼ100%です。
心臓の主治医からは「血中の酸素濃度が低いということは、周りが平地を歩いているところを一人だけ高山の上を歩いたり走ったりしているようなものだよ。」と言われています。
酸素は夜間の就寝時のみ吸入しています。正常な肺が片肺だけで、心臓の構造も複雑なため、今のところ将来も低酸素血症が今よりも改善されることは見込めません。そのため日中も酸素をつけてしまうとこれから先ずっと手放せなくなるから、なくても今くらいに動けるならば日中は酸素をつけないでやってみましょうというのが主治医の考えです。
娘の低酸素血症には、“疲れやすい。疲れが回復しにくい。素早く動けない。”という特徴があります。幼稚園や小学校での集団生活ではスピードを求められることよくあり、歩くスピードについて問題になる場面が時々あります。
歩くスピードが出ないのは筋肉とも関係しています。娘は1歳児検診の時に歩く気配がなく、2歳まで歩行を促すために理学療法を受けていた時期があります。理学療法士の先生から聞いた話によると、人が体を動かすためには酸素が必要で、体の筋肉を作るためにも酸素が必要なんだそうです。娘は当時、血中の酸素濃度が今よりもさらに低く70%前後でした。血中の酸素は体を動かしたり生きることで精一杯で、筋肉がなかなか育たない状態でした。今もその傾向が続いていて、体が全体的に細くて筋肉がしっかりついていません。
足を上げて前に出して地面を蹴って前に進む。普段私たちが何気なくしているこの運動は結構体力がいるようです。娘を見ていると足がしっかり上がらずいつも踵を引きずるようにしてゆっくり進んでいます。娘のペースを無視して早く歩かせようとすると、血中の酸素濃度が下がって苦しくなるので、無理はさせられません。私と手を繋いで引っ張られるようにして歩くのが娘は一番楽なようです。
幼稚園は私立の教会付属の小さな幼稚園に通いましたが。年少、年中までは周りよりもゆっくりなことはみんなに認識されていて、担任の先生の理解もあり、遠足では園長先生が手を繋ぐなどしてくれて、3年間、長女に特別支援をしてくれる先生もなく私が付き添うこともなく過ごしていました。それが年長になり幼稚園の課外活動のようなもので、先生と子供達で地域の消防署へ歩いて見学に行くことがありました。6月の暑い日で今思えば脱水症状だったんじゃないかと思うのですが、担任から歩くのが遅いから急がせたけど、途中で座り込んで大変だったように言われました。年長児の担任の先生には低酸素血症について全く理解してもらっていなかったようです。その後、何度か娘の体について聞いてもらう機会を作ってもらいました。
その年の夏、幼稚園でのお泊り保育があり、そこでも初日に長距離を歩くというので、幼稚園を出発して目的地までの行きだけをみんなに見えないように自転車で娘を送っていきました。そこから幼稚園までの帰りは時間を気にせず園長先生とゆっくり歩いて帰ったそうです。
ここから少し余談になりますが、そのお泊り保育の班毎の活動では、年少、年中と担任をもってくれていた養護教諭の免許を持つベテラン先生がみてくれました。先生からの報告では、あの日は幼稚園に戻った後の娘の声が小さくて口数もとても少なかったそうです。それが夕方になって涼しくなるとだんだん声が大きくなっていつものおしゃべりな娘に戻ったそうです。それで先生は、あの日は湿気も酷くて先生ですら気分が悪くなるような気候だったので、きっと娘も声を出すのもしんどいくらいの体調だったんだろうなと感じたそうです。慢性的に低酸素血症では余力がなく、周りの人のちょっとしんどい程度が、娘にとっては物凄くしんどいレベルなのかもしれないなと、私も改めて気づかされました。
再び今日のテーマに戻ります。歩くスピードが遅いと学校生活でも困ることがあります。教室の移動は低学年のうちはやはり遅いようでしたが、最近では先生方の話によると問題になる程ではないそうです。そうは言っても階段を普通に昇るだけで息をきらしたり、立ち止まって呼吸を整えたり、本人はとても頑張ってるんだろうなと思います。
学校の授業の合間にある校外学習ではその時々の担任の先生から連絡を受けて相談しながら、体力温存も兼ねてみんなが歩く行き帰りを幼稚園の頃と同様に別ルートで自転車で送迎したり、バスに乗って行く社会科見学で歩く行程が含まれている場合はそこだけ手を繋いで歩くために付き添ったりしました。
年に一度春にある遠足でも学校からの要請で私も毎年付き添いで参加しています。娘の歩くスピードが周りに追いつかなくなった時のために班の後ろをついて歩くのですが、小学5年生になった今年は初めて最初から最後まで私の出番がありませんでした。高学年には低学年の児童と手を繋いで歩くというミッションがあったために頑張ったんだと思います。無理はして欲しくないですが、頑張れるほどの体力がついてきたことが嬉しかったです。
次は夏休みが終わると二泊三日の移動教室が予定されています。昨日、担任の先生から相談の電話がありました。登山とハイキングが含まれていて娘の体力ではその二つは厳しいかもしれないとのことでした。その間、宿泊施設で待機するのに娘一人にはさせられないので、保護者か祖父母に待機してもらうということは可能かどうか…という話が出ました。我が家の場合は幼稚園の年中と小1の妹達がいるので主人の仕事がある平日に私が宿泊へいくことは出来そうにありません。同居する義母もいますが、孫達のことをたった一日でも頼むと嫌がるような人なので、なかなか難しいのが現状です。。。
先生と電話で話した後に娘と主人と話をしました。「まぁ行きたい気もするけど、疲れそうだし、行かなくて良いなら、まぁ良いかな!」とあっけらかんと言っていました。
娘も本音は周りの同級生と同じ体験をしたいかもしれません。しかし障害があることでそれが叶わないこともあることを、娘本人が一番よくわかっているのかもしれません。疲れそうだなという不安もあるようでした。私もそんな娘を出来る範囲でサポートしていきたいと思っています。今日も読んでいただきありがとうございました。