手芸が趣味の三姉妹の母Imoanです。前のブログで長女が生まれて一週間までを振り返りましたが、今日はその頃に母として唯一長女にしてあげられた仕事、搾乳について綴りたいと思います。
生まれてすぐから長女の口には呼吸器が入っていて直接飲ませることは出来ませんでした。しかし経管栄養といって鼻から胃に入れた細いチューブに搾乳した母乳を看護師さんが小さな注射器のようなシリンジで少しずつあげてくれていました。
私は出産する前、中学、高校で家庭科の講師をしていました。家庭科の中の保育分野の授業では「生まれたての赤ちゃんには母乳に含まれる免疫物質がとても良いのです。」と教えていました。病院でも助産師さんが同じ話をしてくれて、特に産後すぐに分泌される母乳には免疫物質が多く含まれているのだと教えてくれました。
入院中は授乳室で最初のうちは助産師さんや看護師さんに手伝ってもらいながら3~4時間毎に搾乳して哺乳瓶に溜めては冷凍してもらい、集中治療室の長女の面会へ行く時に長女の元へ届けていました。抱っこもできませんでしたし、集中治療室で私の出る幕はありませんでしたが、この搾乳が唯一できる母らしい仕事でした。それなのに私の母乳はなかなか出なくて、毎回搾乳した量の少なさに落ち込む日々でした。
それでも看護師さん達には搾乳を続けたら母乳の量もきっと増えると励まされ、退院して自宅に戻ってからも搾乳を続けました。本来、母乳は赤ちゃんに吸われて出てくるものだそうで、搾乳機を使ったりもしてみました。また授乳しながら赤ちゃんを抱っこしたり見つめたりして母乳の分泌が促されるのだと助産師さんから聞いたので、ビデオカメラに撮った長女の動画を流しながら搾乳してみたりもしました。他にも面会の合間に分泌を促す母乳マッサージに通ってみたり、母乳育児の本を買って読んでみたり、水分や汁物を多く摂ってみたり、、、思いつくことを片っ端から試してみました。
何かを試して劇的に増えるということはありませんでしたが、長女に直接授乳できる日に備えて搾乳を続けました。そして生後2ヶ月半が経った頃、娘の体をサポートするためについていた色々な機械がなくなり、ようやくその日がきました。それまで長女はおしゃぶりを上手に吸っていたので、きっと授乳もうまくいくものだと私は勝手に期待していました。
しかし現実はそんなに甘くないものですね。娘は生まれつき赤ちゃんに備わっている吸てつ反射で吸うことはできても、栄養は鼻から胃に入ったチューブから摂っていたため、出てくる母乳を飲むことを知りませんでした。おっぱいをくわえても出てくる母乳に「なんじゃこりゃ~っ!」と言わんばかりに泣きました。その頃は血中の酸素濃度が今よりももっと低かったので泣くとすぐに酸素濃度が下がり、モニターがピンコンピンコン鳴り響きます。そして看護師さんに「お母さん、授乳の練習はまたこの次にしましょう」と促されるばかりで。。。何度トライしてみてもその繰り返しでした。
正直、お母さんとしては悲しいですよね。娘の状況を考えれば無理のないことなのですが、やっぱり悲しかったです。長女は肺を切除する手術をはじめ心臓の姑息的な手術も受けて、ある程度体調が良くなっていました。あとは授乳ができるようになって、口から鼻に入れていた経管栄養のチューブが外れたら退院できるという段階でした。だから何としても授乳できるようにしたかったのですが、看護師さん達が哺乳瓶であげようとしても全く受け付けず、鼻から入れているチューブがとれる気配はありませんでした。
そして結局、治療の次のステップへ進めるためには栄養を十分に摂って体を大きくすることが重要だったので、自宅でも病院と同じように経管栄養で母乳やミルクを注入できるように、鼻から胃に入れているチューブの交換や、点滴のような要領で注入する訓練を受けました。鼻からチューブが入ってようと、一緒に暮らせるようになるなんて、夢のようでした。そして生後3ヶ月半で経管栄養のチューブをつけたまま長女は退院しました。
退院後も授乳の練習はするのですが、全くうまくいかず、それでも母乳をあげたいという気持ちというか執念みたいなものがあったのか、生後6か月まで搾乳を続けました。止めるきっかけになったのは義母から「アンタもよくやるねぇ。」という呆れたような一言を言われたことでした。義母は元々、長女がお腹の中にいる時から病気については抵抗があったようで、退院しても鼻にチューブが入っていることに不満があるようでした。
ただ、私も精神的に疲れていたので、義母にデリカシーのない一言を言われて、もう良いかな、、、と思いました。そしてこの経管栄養はその後も外すことが出来ず、なんと2歳になるまで続きました。経管栄養についてはまた今度、詳しく書きたいと思います。
赤ちゃんの事情、お母さんの事情、様々な事情で授乳をしたくてもできないお母さんが今もいらっしゃると思います。搾乳するのが昔の私のように苦手なお母さんもいらっしゃるかもしれません。私の父がよく言うセリフがあります。「まぁそんなに肩に力を入れんと、ゆたーっと構えっとったらええ。」きっと充分頑張ってると思いますので、どうかリラックスして過ごしください。今日も読んでいただきありがとうございました。